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管楽器はなぜロングトーンが必要か?
プロ奏者はその日の練習開始のウォーミングアップを
必ずロングトーンから始めます
岸田佳久(サックス教室講師)
皆さん、こんにちは、アルル音楽学園のサクソフォン講師の岸田です。
全ての管楽器に共通する基礎練習、ロングトーンについて説明します。
ロングトーンとは?
単純に解説すると、一つの音を出来るだけ長く吹き伸ばすことですが、
これがどうしてなかなか奥が深いんですね・・・
全ての管楽器奏者は練習する時に必ずロングトーンから始めます。
ロングトーンを省略している人は今日からでも遅くありません、是非ロングトーンから
始めましょう。必ずライバルに差がつきます。
アルルでもいきなり音階や曲から吹き始める人を多く見かけますが、あまり良くありません。
ロングトーンをしなくても勿論演奏出来ますが、5年後、10年後に圧倒的な差がつきます。
私の生徒でも高音域がなかなか出ない人、力んでしまう人、出ても音が汚い人、はては
「簡単に良い音を出す方法はありませんか?」等と尋ねる人達がいますが、勉学に王道無しと
言っておきましょう。日々試行錯誤と努力の結果、素晴らしい音色に変わっていきます。
段階別ロングトーン・トレーニング法
(私はサクソフォン奏者なので他の管楽器に当てはまらないところはご了承願います)
初心者&初級者編
もっともロングトーンを練習しなければいけない段階です。練習は必ずロングトーンから始めましょう。
時間にして最低でも10分〜20分は必要です。(練習方法は各楽器の教則本や先生にお任せします)
「えー20分も!」という声が聞こえてきそうですが、管楽器の練習開始はスポーツと同じと考えて下さい。
スポーツは必ずウォームアップをしてから競技に入ります。
要するに管楽器の場合、音階や曲から始めている人は、スポーツに当てはめると、いきなり試合を
始めるのと同じです。皆さんも経験があると思いますが、テニスやサッカー、野球等をいきなり始めて
筋を痛めたり筋肉痛がなかなか取れなかったり、場合によっては怪我をしてしまったり・・・。
プロスポーツ選手は1年間通して戦える体力作りと、無用なトラブルを防ぐ為に十分なウォームアップを
日々欠かさずトレーニングします。
ベテラン選手になればなる程選手生命を延ばす為に慎重にウォームアップします。
管楽器の場合は別に怪我をすることもありませんし、筋肉を傷めることもありませんが、
最初に書きましたが5年後、10年後に差がつきます。
さて、ロングトーンを練習する時に意識する事を説明します。目的意識が全く無い状態で
ただ練習しても意味が無いので、次の5項目を意識して練習して下さい。
1 音の吹き始めから終わりまで音量を変えないように気をつける
2 音の吹き始めから終わりまで音色が変わらないように気をつける
3 自分の思ったタイミングで音が出るように気をつける
4 呼吸法を意識する(腹式呼吸)
5 出来るだけリラックスして吹く
1,2については、管楽器を演奏する筋肉組織が作られるのに時間がかかる為、音が安定するまでには
月日がかかります。焦らずに練習しましょう。
3はこれも大変です。管楽器は一音一音息の入れ方が違います。吹きやすい音は自分の思った
ポイントで鳴ってくれますが、低音になると反応が鈍くなります。高音では息だけでなく体全体の
使い方も覚えなければいけません。
4,5、これも奥が深いので、初級者は出来るだけ沢山息を吸って、体は常にリラックスさせた状態で
吹くようにしてください。(呼吸法については別の機会に書きます)
中級編
「初級編をマスターしたな」と思う方はさらに高い目的意識を持って練習しましょう。
まずは、練習する時は必ず大好きなプレーヤーの音をいつもイメージしながら練習します。
憧れのプレーヤーがいない人は多くのプレーヤーのCDを沢山聴きましょう。
きっと見つかるはずです。
この、自分の頭の中で音をイメージしながら練習する方法は非常に大事です。
年月はかかりますが確実に変わっていきます。
1 音の吹き始めの部分(発音)を意識して練習する。
2 音量の違うロングトーンを練習する。(ピアノ、メゾピアノ、メゾフォルテ、フォルテ等)
3 クレシェンド&デクレシェンドで練習する。
1はかなり大変です。タンギングの良し悪しで音の出方が変わります。詳しくは自分の先生に
聞いてみて下さい。(この部分でよい音の80%位は決まります)
2は、吹き始めから吹き終わりまで音量を変えずに気をつけて吹きましょう。特に小さな音は大変です。
低音や高音のコントロールも試行錯誤が必要でしょう。
全くゆれない(震えない)音を目指して練習しましょう。
それから、色々なタイプのクレシェンド&デクレシェンドが出来るとより効果的です。
上級編
初級、中級を終えると大分音が良くなってきたと思いますが、これからが大変です。
1 音程を意識しながら練習する。
2 ビブラートをかけたロングトーン。
3 音の響き、音色を変えたロングトーン(明るい音、暗い音、軽い音、重い音)
1は、チューナーを必ず使います。各楽器によって音程の合わせ方はかなり違います。
唯一の共通点は気温によって音程が変わる事位なので自分の先生に聞いて見ましょう。
(寒いと音程が下がり、暑いと音程が上がる)
2は、これも楽器によって方法が異なりますので、自分の先生に聞いてください。
3、音色は楽器やマウスピース、木管の場合はリード等によって大体の音色が決まりますが、
最後はそれをコントロールする人間の体によって音色を変える事が可能です。
多くの教則本にはアンブシュアや喉の使い方、呼吸法、お腹の支えについてしか書かれていませんが
それだけでは足りません。最後は楽器と自分が一心同体となって音を出さないと
感動的な音は出せません。
ついつい偉そうな事を書いてしまいましたが、簡単に言うと、頭の天辺から足の裏の組織まで使って
音を作ります。それから、自分の体の周りの空間も大事です。
これら全てを意識して、音色(体の使い方)を変えてロングトーンを練習します。
プロ級編
1 倍音コントロールによるロングトーン
2 最小限の筋肉コントロールで最大限の音量をコントロールするロングトーン
3 一日8時間以上吹いてもバテない(一日3回本番の仕事を1ヶ月こなせるような)ためのロングトーン
4 感動的な音を出すためのロングトーン
5 循環呼吸によるロングトーン及び音階のトレーニング
1 については音響学と体の構造について多くの説明が必要なので今回は省きます。
簡単に説明すると音を細くしたり太くしたり、響きを増やしたり減らしたり、
音を重くしたり軽くしたりしながらロングトーンします。
2と3 これは上級編で説明したとおり、頭の天辺から足の裏側まで意識しながら練習します。
4 これは企業秘密で〜す。
5 循環呼吸もこれといって教則本はありませんが、簡単に説明すると、鼻から吸いながら
吹き続ける演奏です。大きな楽器ほど不利になりますが、私の友人で現在アメリカの
バークリーに留学中のトロンボーンの友達から聞いた話ですが、彼の先生はトロンボーンで楽々、
循環呼吸をやるそうです。恐るべしアメリカ・・・・
この先はいったいどうなるか分かりませんが、私の初級者だったころから現在までを
簡単にまとめて見ました。
今後は死ぬまで吹き続けられる体を作るために日々ロングトーンの研究です。
それぐらい大事ですから、つまらないなーと思わずに楽しみながらロングトーンを練習しましょう。
ロングトーンを練習しない管楽器奏者はどうなるか?
体に不必要な力が入ったまま演奏する癖が付いていくため、長時間の演奏は困難。
いわゆる悪い奏法が身についてしまうと直すのが可なり大変で(筋肉組織がそうなって
しまうため)年齢が上がるほど吹けなくなる可能性が高くなる(50歳代からのお話ですが)
場合によっては腰痛、顎関節症などの疾病を引き起こす例もあります。(これは若い人でもなります)
また高音域でどうしても良い音が出なかったり、金管楽器の場合はハイノート、
木管の場合はフラジオなどがコントロール出来ない、ビブラートが掛からない、指が速く動かない、
音量の差が出せない等の問題点が出てきます。勿論、循環呼吸は色々な体の組織を使う奏法なので
言うまでもありませんが。
それからロングトーンを練習していても、正しい体の使い方が出来ていないと効果はありませんので、
これは客観的にチェックしてくれる先生方にお願いするしかありません。
まとめ
ロングトーンの練習は演奏者のレベルに応じて考え方を変えながら日々
トレーニングするしかありません。(焦らずに練習しましょう)
1週間練習したから終わりでなくて、ご飯を食べるのと同じで管楽器を吹き続ける限り
常に練習の始まりはロングトーンがスタートです。
だまされたと思ってやってみて下さい。三ヵ月後、半年後、一年後とみるみる効果が表れるはずです。
アルル音楽学園 夢をかなえる音楽教室 東京都新宿区 JR目白駅(豊島、池袋)