SACD or DVD-Audio ?? かい(ぴあの科;自称フリーライター)
私の脳内物質は、イヤな事があると、物欲を刺激するらしい。
私は自分のサラリーより高いものを買ってしまう事がしばしある。
去年の今頃は、値段が下がり始めたプラズマテレビを、会社での”事件”の
腹いせに、「ボンッ!」と購入してしまった。 (もちろん、ローンで、)
1年に1回〜2回のサイクルでこの様な脳内臨界事故が発生するのだが、
今回はSACDプレーヤを購入してしまった。
だが、よく言われている様にSACDは、かつてのベータとVHSのビデオ覇権競争の様に、
優れていても消えてしまう恐れがあるので、ここで私が体験したSACDの
素晴らしさを紹介し、あわよくばSACDユーザを増やそうと思い、
アルル音楽学園様のページを拝借し、紹介したいと思う。
SACDとは、Super
Audio CD の略である。つまり、「 スッゲっ〜ぇ音のCD
」ちゅう
わけだ。
しかし、実際に聞いてみたところ、CDとは全くの別物である事がわかった。
この先、ところどころに専門用語が出てくるが、できるかぎり説明文を付け、、
私なりにかみ砕いて書くので、少々ガマンして、読んで頂ければと思う。
1980年代初頭に現れたCDがデジタル方式で音を記録しているのはご存じだと思う。
(何がどうデジタルなのかは、ちょっとおいておいて。。。^^)
デジタル録音方式と言っても、その中でもPCMというデジタル録音方式がCDでは
採用された。(ちゅうか当時はそれしかなかった・・・??^^;)
PCMデジタル録音方式とは、簡単に言うと、音(音波)を、時間の方向と、強弱の方向で
細分化し、
その細分化された時点(瞬間)を数値化して記録していくというやり方である。
(だから、再生のときは逆の事を行い、人間の耳が理解できるアナログ信号に
変換して(戻して)、音を鳴らす。)
(う〜ん、我ながらわかりづらい説明だ。。。)
SACDの競争相手とされる DVD-Audio も、このPCMデジタル録音方式が標準となっている。
ただしCDよりも、時間軸での記録のきめ細かさと、強弱の方向の記録のきめ細かさを
高めているので、CDよりはるかに高音質が得られるというワケだ。
これらPCMデジタル録音方式に対して、SACDという全く違うメディアを発表し、
発売したのが、なんと、CDの産みの親、SONYとPHILIPSなのである。
(CDは、SONYとPHILIPSが共同で開発した。)
SACDは、今までのCDとのハイブリッド盤(※1)が作成できるからか、
それともCDの名を継承している為か、CDの延長線上にあると思われがち
(私自身もよく調べて、体験するまでそう思いこんでいた)だが、デジタル録音と
ひとくちに言っても、DSD(Direct
Stream
Digial)という
全く新しいデジタル録音方式が採用されており、
それが、CDやDVD-Audioに対するアドバンテージを生み出している。
(DSDについては、私も理解できてない部分があるので、以下URLを参照願いたい。)
http://www.super-audiocd.com/aboutsacd/format.html http://www.super-audiocd.com/
技術的な事はこれくらいにして、SACDの”音楽”の話をしよう。
私がまずノックアウトさせられたのは、DG(ドイツグラモフォン,ユニバーサル)から
発売されている、カラヤンが1960年代にベルリンフィルと遺したBEETHOVENの交響曲全
集である、
この音源は、最初のCD化、ハイビットデジタル機材が登場してからの再リマスタリング
CDと、
再三聞いたはずなのだが、SACDで改めて聴いてみて、初めて聞いた様な感動を覚えた。
豊かなホールトーン、現在の様に軽くなる前の重圧なベルリンフィルの弦の響きが
完璧と言って良いまでに見事に再現されている。
そして、「あぁ、この部分はこう弾いて(指揮して)いたのか。」
と、改めて発見をいくつもし、感動を覚えた。
アナログテープ独特のヒスノイズ(※2)と、当時の録音の限界であったと思われる
低音域の若干の減衰さえなければ、最新録音と言われても疑わないほどである。
これでSACDに恋してしまった私は、次々とSACDを購入し、聴いた。
小林研一郎のチャイコフスキー第5交響曲、シャイーのマーラー交響曲録音、
アーノンクールのブルックナー、ヒラリー・ハーン(Vn)のディスクなどなど。
結局は、音なので言葉で説明するのは限界があるのだが(俺、矛盾した事言って書いてる?!?)、
SACDが、CD(DVD-Audioも??)より優れている点をまとめると以下の様になる。
1.楽器定位
2.大音響時、強奏時でも変わらぬ、解像度の高さ
3.空間表現力
4.残響などの実音以外の表現力
まとめてしまうと、「なんだ4つだけか。」という気もするが、これがなかなか、
いままで苦労して、プレーヤやスピーカを高級品にしたり、セッティングや
チューニングの試行錯誤をしてもCDでは到達できなかった域を、SACDは
大した苦労をせずに実現してしまうのである。
楽器定位については、小編成でも大編成でも、ピアノ独奏でも何でも
言える事なのだが、オペラの様に奏者(歌手)が物理的に移動する事が無い限り、
音が大きくなったからと言って、楽器の居場所(耳からかんじられる居場所,音場)が
移動(具体的には音が大きくなった時に突然目の前に現れる感じが)しては困るのである。
わかりやすいのは、ティンパニなどの打楽器で、いかに強打のロール打ちでも、
今まで音場の中で後ろに居たものが、突然目の前に現れるのはオカシイ。
例え、大音響のティンパニのロール打ちでも、突然、弦セクションの前に現れるのではなく、
今までと同じ場所(楽器定位)で、「ゴーーーっ」と鳴ってなければいけない。
SACDは、これらの楽器定位の表現、音場表現がズバ抜けている。
ウソだと思うのなら、購入するふりでもして、試聴ができる店で試してみて頂きたいのだが、
EXTON
/ オクタヴィア レーベルから出ている、SACDの
アシュケナージ指揮チェコフィルのドヴォルザーク第九交響曲「新世界より」と、
DG /
ユニバーサル
から出ているカラヤン指揮ウィーンフィルの同作品のCDを
聞き比べてみてほしい。前者のディスクが実に自然な音場を表現するのに対し、
後者は、突然ティンパニが前に出てきたり、金管が前に出てきてしまったりしている。
なお、このアシュケナージ指揮チェコフィル盤はCDとのハイブリット盤が発売されている
ので、SACDを買うのを止めても無駄にはならない。
小編成時の個々の楽器のリアリティはもちろん、SACDは、大音響になっても響きが濁
らない。
私もSACDを聞き出してから気づいたのだが、CDのトゥッティは濁っている。
濁っているというのは言い過ぎかもしれないのだが、CDはその処理能力を越える
トゥッティ、音圧があるとパワーで押し切ろう、切り抜けようとしている様に聞こえるのだ。
それに対し、SACDは、余裕があり、マーラーの第八交響曲「千人」の様な作品においても、
パワーをもてあます事無く、豊かに空間上に解き放っていく。
その様は実に快感で、オーディオ(家で聴く音楽)の醍醐味だ。
高周波(※3)にまで再生音域を伸ばせば、残響や空間表現力が良くなるのは、
私はDAT(※4)ですでに体験していたので、ある程度は予想していたが、
これもSACDは見事である。SACDのプレイボタンを押すと、音が出る前のほんの
わずかな無音部分からして、リスリングポジション(視聴位置)の”空気感”が変わるのが
わかる。SACDの宣伝文句に「まるでホールにワープしたかのような・・・」というのが
あるのだが、これは誇大宣伝ではない。
SACDは、DVDと同様、5.1チャンネルのサラウンド再生に対応している。
残念ながら私と私の部屋は、とても6個ものスピーカとまともに5.1チャンネルを
再生できるオーディオ機器を設置する場所も金も無いので、今のところ、
今まで通りの左右の2チャンネルで聴いているのであるが、SACDは、レコード制作者側が
サラウンドを意識して制作をしたディスクを聴くと、2チャンネルでも、
見事にサラウンド録音・再生の様な音場を再現する。これは聴き手ならずも、
レコード制作者側にも、新たな表現の可能性を提示する事になり、
今後、どの様なディスクが登場するかが楽しみである。
最後に、SACDの問題点を挙げ、終わりにしたい。
ここまで読んで下さった方(いるかな?
^^;)
ありがとうございました。
1.マスターがPCM方式で録音されたレコードでは意味がない。
2.まだまだタイトル数が少ない。
3.特にマスターから完全にDSD録音されたものが少ない。
4.実績年数がまだ少ない(消える可能性は否定できない)。
CDが爆発的な勢いでLPに取って代わった後を追うように、
PCMデジタル録音方式が一般になった。SACDを手に入れてから、
PCMデジタル録音されたものをSACD化したものを何枚か聴いたのだが、
これらに関しては、CDと比較しても音に大きな差は感じられなかった。
規格の最終決定が遅れたDVD-Audioに比べると(※5)、
今のところSACDの方が既発売タイトル数が多いらしいのだが、
まだまだ約2000タイトルと発売数は少ない。ただし、プレーヤ共々、値段はこなれてきた。
先に書いた通り、SACDの素晴らしさはDSDという新しいデジタル録音方式に
よって実現されており、DSD録音されたもので最高の真価を発揮する。
しかし、まだまだ録音現場では、DSDよりPCM録音機材の方が多いようである。
特にPCMデジタル録音されたものでは、初期のものであればあるほど、
CDとの差は感じられず、時にはCD専用プレーヤで聴いた方が良いのでは
ないか?と思われるものさえあった。
アナログ録音されていたものをSACD化したものは、それらに比べると劇的な
素晴らしい効果を上げているが、先に挙げたDGのカラヤンのBEETHOVENも
そうらしいのだが、アナログマスターテープからDSD変換したのではなく、
ハイクオリティPCM機材(例えば96kHzサンプリング、24ビットPCMデジタル機材)で
デジタル用マスターを作り、それからDSDに変換しているものも少なくない。
そして、当たり前だが、まだまだ登場したばかりで、LPやCDの様な歴史的実績は無い。
現在もLPが時々新譜でプレスされる事を考えると、LPは登場から半世紀が経とうと
している今も現役なわけだ。
SACDが半世紀とまでいかなくても、CDの並に短くても20〜30年、
残り続ける事ができるか否かは誰にもわからない。
文注
※1;ハイブリッド盤
SACDは、2層方式で、CD用の信号(PCM)も記録できる。
このSACD用の信号(DSD)と、CD用の信号(PCM)の両方を記録しているものを、
ハイブリッドディスクと言い、現在、ほぼこれがSACDの主流となっている。
CD信号は、普通のCDプレーヤでも再生ができる(CD音質)。
※2;ヒスノイズ
高音域に(わずかに)持続的に聞こえる「シュー」というノイズ音。
カセットテープで聞いたことがあると思う。
※3;高周波
人間の耳は、約20Hzから20kHzの音を耳で聞くことができるとされ、
(個人差あり)これを「可聴周波数帯域」と言っている。
DATや、DVD、SACDは、20kHz以上の高音が収録できる。
なお、SACDは、理論的には約100kHzまで収録できるとの事。
※4DAT
DigitalAudioTapeの略。現在も消えては居ないが、市民権を得るには
至らなかったオーディオフォーマットの一つであり、
CDとほぼ時を同じく出現したが、音質はCD以上で、
特に高周波をCD以上に捉える事ができる。
※5DVD-Audioの規格決定の遅れについて
CDで相次いでいる違法コピーを防ぐ為、DVD-AudioやSACDはコピーを防ぐ
技術が導入されている。DVD-Audioは、このコピー防止策の決定が遅れ、
発売がSACDより遅れた。
視聴したお薦めディスク厳選7点
・BEETHOVEN
交響曲全集
カラヤン指揮ベルリンフィル(DG /
ユニバーサル)
1960年代のアナログ録音。明記は無いがPCM方式のデジタルマスター
からDSDに変換したものと思われる。が、SACD化の効果は素晴らしい。
・MAHLER
交響曲第3番ほか
シャイー指揮ロイヤルコンセルトヘボウ(DECCA /
ユニバーサル)
待望のDSDデジタル録音。冒頭から背筋がふるえるほど素晴らしい録音。
・TCHAIKOVSKY
交響曲第5番ほか
小林研一郎指揮チェコフィル(EXTON /
オクタヴィア)
こちらもDSDデジタル録音。名エンジニア江崎氏とコバケンの渾身の1枚。
・MENDELSSOHN ,
SHOSTAKOVICH
Vn協奏曲
ヒラリー・ハーン独奏ほか(SONY)
DSDデジタル録音。SACD専用ディスクなので購入時には注意。
このMendelssohnのディスクは、著者の私見ではハイフェッツ以来の銘盤。
・akiko
/ Mood Swings
akiko ほか(Verve /
ユニバーサル)
スゥイングジャーナル誌主催2003年度ディスク大賞ほか受賞。
次にあげるHiromiのアルバムとは録音も演奏も対照的な大人のCoolな一枚(??)。
・Hiromi
/ Another mind
上原ひろみ ほか(TELARC /
ユニバーサル)
マルチチャンネル再生に対応しているが、2チャンネル再生でも、
自分がジャムセッションの中に居るようなサラウンド感が味わえるディスク。
演奏、録音共々熱い。DSD録音。
・PINK
FLOYD / The Dark Side of the
Moon
日本では「狂気」というよくわからん邦題をつけられてしまった名盤。
1973年の初発売以来、世界中で何百万枚も売れているそうだが、
完全に理解できてる人がいたらお目にかかりたい。
TIME
では、聴き手は時計に囲まれる。(東芝EMI)
CDとの差が(あまり)感じられなかったディスク・・・・・
・Tchaikovsky
Vn協奏曲ほか
五嶋みどり(SONY)
おそらくあまりハイエンドではないPCM録音されたもので、マスターの限界と思わ
れる。
CDとしても最高クラスの録音ではないと思う。
・J.S.Bach
Vn協奏曲ほか
ヒラリー・ハーン(DG)
理由;同上。 ただし、5.1チャンネル録音されているので、
そちらで聞けば、効果が確認できたかも。録音自体は良い。
・Ravel
管弦楽曲集
ブーレーズ指揮 再録音(DG)
理由;同上。 こちらはバッチリ、オリジナルが44.1kHz/24bit/PCM録音と明記がある。
・Shostakovich
交響曲第7番
ゲルギエフ指揮
48kHz/24bit/PCM録音と明記あり。CDとしズバ抜けて良い録音とは思わないのだが
、
世評は高い。思い出してみれば筆者はゲルギエフの録音で心動かされた事がない。
単に(私との)相性の問題か?
視聴機材(抜粋)
・SACD; marants
SA-17S1(左右2チャンネルで視聴)
・アンプ; DENON PMA-2000 II
・スピーカ; B&W
CDM-1SE
・ケーブル
SACD → AMP;AudioQuest社製
AMP →
SP(Main);SAEC社製
AMP → SP(High);Monitar Cable コブラ